RMII
RMII(Reduced Media-Independent Interface )は、PHY/MAC 間接続の信号線を削減するために作られた規格だ。データインタフェース信号線の総数は16本から半分の8本に削減されている。基本動作に変更はなく、MII データインタフェースのデータバス本数が1/2になりクロックは2倍になったが、クロックの立ち上がりでデータを駆動することも変わりがない。MII 管理インタフェースは全く同じだ。MII 標準に対し次の 5カ所が変更された。
- 送信/受信信号線を4本から2本に変更
- TX_CLK と RX_CLK を1本の REF_CLK に置き換え。MAC と全ての PHY 間でクロックを共有
- クロック周波数は、 25 MHz から 50 MHz と 2 倍に変更(データバス幅が1/2になったため)
- RX_DV と CRS を多重化し1本に変更。
- COL は廃止
- TX_ER 廃止
基準クロックは、外部ソースから MAC と PHY 両方のデバイスに供給するか、MAC から PHY に供給する場合がある。
RMII の特徴は、「半2重通信」とこれに伴う「衝突」のサポートをほぼ捨てたことだ。かつて主流だった「同軸線による半2重通信」が衰退し、「撚対線による全2重通信」が主流になったことが背景にある。図1 は RMII のデータインタフェースとオリジナルの MII との比較表だ。

RMII 規格の背景に何があった?
かつて MII 用のコネクタがあった。私は設計したことも使ったこともないが Sun Ultra1 に実装されていたようだ。MII コネクタは40ピンで、外部に物理層を接続できるようになっていた。 MII のデータインタフェースと管理インタフェースの信号線は合計18本ある。信号線と同数の基準電位(GND)線18本と電源線(+5V)4本を加えると40本になる。当時のパラレルバスコネクタの信号配列は、信号線と同数の GND 線と電流容量に見合う電源線を備えることだった。コネクタの信号線配列は図2 の様になっていた。

MII 規格は、IEEE802.3u で規定されているが、同じ規格委員会で通信速度が 100Mbps の 100BASE-TX(撚対線) と 100BASE-FX(光ファイバー) の審議が進んでいた。特に光ファイバー通信ではモジュールを差し替えできる SFP(Small Form factor Pluggable:挿抜可能な小型モジュール)の要望が強く、RMII の仕様は SFP のインタフェースを意識したようだ。ちなみに SFP インタフェースは20ピンで、40ピンの MII での対応はできない。信号線数が半分の RMII が検討された背景にはこのような事情があったようだ。しかし、残念なことに SFP のインタフェースは RMII にはなっていないし、RMII は IEEE で規格化されず業界団体の定めた仕様 (RMIIコンソーシアム仕様)になっている。少し残念な結果だが、RMII は業界標準として生き延びている。実際の MAC層ーPHY層ーSFP の接続は図3 の様になっている。

GMII
GMII( Gigabit Media-Independent Interface )は、MII と同様 MAC と PHY 間接続のインタフェース規格だ。構造は MII と変わらず、データインタフェースと管理インタフェースの2つのインタフェースで構成される。データインタフェース構造も MII と変わらない。一番の違いは、 1000Mbps をサポートするため、送受信データバス幅を2倍の8ビットに、送受信クロックとして5倍 の 125MHz を追加したことだ。データ幅が2倍になりクロックが5倍になることで10倍の 1000Mbps の送受信が可能になる。従来の 10Mbps と 100Mbps には互換モードがあり、送受信データバスの下位4ビットと 1/5 のクロックで MII と同じ動作を提供している。図4 は、MII と GMII の比較表で、新たに 125MHz の GTX_CLK が追加され、RX_CLK にも 1000Mbps 用の 125MHz が追加された。送受信データも MII の4ビットから8ビットに拡張されている。これ以外の信号線は変わっていない。管理インタフェース(MDIO/MDC)に変更はない。GMII は、IEEE 802.3z-1998 で規定され、その後 IEEE 802.3 に組み込まれた。

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