オリジナルの MII は、データインタフェースと管理インタフェースの2つのインタフェースで構成される。データインタフェースは、更に送信用と受信用の2つの独立したチャンネルに分かれる。各チャンネルにはそれぞれ独自のデータ、クロックと制御信号がある。送信用(MAC→PHY)には7本の信号線、受信用(PHY→MAC)には9本の信号線がある。合計16本と信号線が多いインタフェースだ。
管理インタフェースは、1本の双方向データ(MDIO)と1本のクロック(MDC)で構成される。こちらは信号線が2本とシンプルだ。管理インタフェースは、イーサネットの拡張に伴い機能拡張しているが、基本形は変わらず現在も使用されている。MII は IEEE802.3u で規定されている。
図1 は、イーサネット回路モデルで、第2層の MAC と第1層の PHY 間は MII で接続される。図2 は、スイッチ(ブリッジ)の回路モデルだ。MII のデータインタフェースは、MAC と PHY 間を1対1で接続し、管理インタフェースは最大32個の PHY を一つの MAC 配下に接続することができる。この構成は一見良さそうに見えるが、32ポートスイッチでは MAC と PHY の間に512本のデータインタフェース配線が必要になる。プリント基板のレイアウトはかなり面倒だ。


データインタフェース
MII データインタフェースには、送信用と受信用にクロックと4ビット幅データバスがある。送信用と受信用クロックは、リンク速度が 100Mbps では 25MHz 、10Mbps では 2.5MHz のクロックが PHY から MAC に供給される。PHY がリンク速度に応じたクロックを供給することで、MAC はリンク速度を意識せずに動作することができる。リンク速度とクロックの関係は次のようなっている。
- 10Mbps :2.5MHz×4bit=10Mbps
- 100Mbps :25MHz×4bit=100Mbps
MII データインタフェースには、データバスとクロック以外に幾つかの制御信号がある。詳細は、表1/表2 をご覧いただきたい。受信データは受信クロックの立ち上がりで取り込み、送信データは送信クロックの立ち上がりクロックで駆動される。図3 は、MII データインタフェースのタイミング例だ。設計時は半導体のマニュアルを参照いただきたい。
信号名 | 機能 | 概要 | 信号方向 |
---|---|---|---|
TX_CLK | 送信クロック | リンク速度に基づきPHYが生成 ( 100Mbps:25MHz/10Mbps:2.5MHz) | PHY to MAC |
TXD[3:0] | 送信データビット0 先頭 | MAC がTX_CLKの立ち上がりに同期し駆動。 TXD[0] が先頭ビット | MAC to PHY |
TX_EN | 送信可 | MAC がTX_CLKの立ち上がりに同期し駆動。 フレーム送信中 High | MAC to PHY |
TX_ER | 送信エラー(option) | MAC がTX_CLKの立ち上がりに同期し駆動 フレーム内:フレーム送信中止要求/フレーム外:低電力移行要求 | MAC to PHY |
信号名 | 機能 | 概要 | 信号方向 |
---|---|---|---|
RX_CLK | 受信クロック | リンク速度に基づきPHYが生成 ( 100Mbps:25MHz/10Mbps:2.5MHz) | PHY to MAC |
RXD[3:0] | 受信データビット0 先頭 | PHY がRX_CLKの立ち上がりに同期し駆動。 RXD[0] が先頭ビット | PHY to MAC |
RX_DV | 受信データ有効 | PHY がRX_CLKの立ち上がりに同期し駆動 プリアンブル受信後SFD以前にHighに移行。 幾つかのプリアンブル消失の可能性あり | PHY to MAC |
RX_ER | 受信エラー | PHY がRX_CLKの立ち上がりに同期し駆動 フレーム内:受信エラー/フレーム外:リンク先が低電力モード | PHY to MAC |
CRS | キャリア検出 | 受信クロックと非同期/半2重モードでのみ有効。 メディア使用中 High | PHY to MAC |
COL | 衝突検出 | 受信クロックと非同期/半2重モードでのみ有効。 衝突検出で High | PHY to MAC |

管理インタフェース
管理インタフェース(MDIO:Management Data Input/Output)シリアルバスは、MACとPHYの間で管理情報を転送する MII のサブセットインタフェースで、2本の信号線で構成される(表3)。双方向データバスの MDIO とデータ同期クロック MDC だ。ライト時は MDC 立ち上がりで変化し、リード時は MDC の立ち上がりで読み込む。MDC の最高周波数は 2.5MHz になる。2.5MHz は、 MDIO の1ビット幅が 400ナノ秒以上に決まっているためだ。しかし、最近は高速化が進み MDC が 25MHz の製品も流通している。
信号名 | 機能 | 概要 | 信号方向 |
---|---|---|---|
MDIO | 管理データ | PHY ステータス読出し/設定書込みデータ | 双方向 |
MDC | 管理データクロック | MDIO 駆動クロック | MAC to PHY |
管理インタフェースは、32個の PHY デバイスの最大32個のレジスタにアクセスできる。このレジスタは、リンク状態、通信速度やオートネゴシエーションの起動などの機能がある。図4 は管理インタフェースの基本フォーマットで、図5 はリード動作例、図6 はライト動作例だ。



図7 と図8 は、 TEXAS INSTRUMENTS 社の DP83848 の例だ。実際の設計時は最新の半導体マニュアルを参照いただきたい。MII 以外のインタフェース追加や 1Gbps/10Gbps などの高速インタフェースの追加に伴い常に変化しているためだ。


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