イーサネットの物理層(8)MIIのデータインターフェイス/管理インターフェイス

オリジナルの MII は、データインタフェースと管理インタフェースの2つのインタフェースで構成される。データインタフェースは、更に送信用と受信用の2つの独立したチャンネルに分かれる。各チャンネルにはそれぞれ独自のデータ、クロックと制御信号がある。送信用(MAC→PHY)には7本の信号線、受信用(PHY→MAC)には9本の信号線がある。合計16本と信号線が多いインタフェースだ。

管理インタフェースは、1本の双方向データ(MDIO)と1本のクロック(MDC)で構成される。こちらは信号線が2本とシンプルだ。管理インタフェースは、イーサネットの拡張に伴い機能拡張しているが、基本形は変わらず現在も使用されている。MII は IEEE802.3u で規定されている。

図1 は、イーサネット回路モデルで、第2層の MAC と第1層の PHY 間は MII で接続される。図2 は、スイッチ(ブリッジ)の回路モデルだ。MII のデータインタフェースは、MAC と PHY 間を1対1で接続し、管理インタフェースは最大32個の PHY を一つの MAC 配下に接続することができる。この構成は一見良さそうに見えるが、32ポートスイッチでは MAC と PHY の間に512本のデータインタフェース配線が必要になる。プリント基板のレイアウトはかなり面倒だ。

図3 イーサネット回路構成とMII
図1 イーサネット回路構成とMII
図4 イーサネットスイッチの構成例
図2 イーサネットスイッチの構成例

データインタフェース

MII データインタフェースには、送信用と受信用にクロックと4ビット幅データバスがある。送信用と受信用クロックは、リンク速度が 100Mbps では 25MHz 、10Mbps では 2.5MHz のクロックが PHY から MAC に供給される。PHY がリンク速度に応じたクロックを供給することで、MAC はリンク速度を意識せずに動作することができる。リンク速度とクロックの関係は次のようなっている。

  • 10Mbps :2.5MHz×4bit=10Mbps
  • 100Mbps :25MHz×4bit=100Mbps

MII データインタフェースには、データバスとクロック以外に幾つかの制御信号がある。詳細は、表1/表2 をご覧いただきたい。受信データは受信クロックの立ち上がりで取り込み、送信データは送信クロックの立ち上がりクロックで駆動される。図3 は、MII データインタフェースのタイミング例だ。設計時は半導体のマニュアルを参照いただきたい。

信号名機能概要信号方向
TX_CLK送信クロックリンク速度に基づきPHYが生成
( 100Mbps:25MHz/10Mbps:2.5MHz)
PHY to MAC
TXD[3:0]送信データビット0 先頭MAC がTX_CLKの立ち上がりに同期し駆動。
TXD[0] が先頭ビット
MAC to PHY
TX_EN送信可MAC がTX_CLKの立ち上がりに同期し駆動。
フレーム送信中 High
MAC to PHY
TX_ER送信エラー(option)MAC がTX_CLKの立ち上がりに同期し駆動
フレーム内:フレーム送信中止要求/フレーム外:低電力移行要求
MAC to PHY
表1 MII データインタフェース(送信)
信号名機能概要信号方向
RX_CLK受信クロックリンク速度に基づきPHYが生成
( 100Mbps:25MHz/10Mbps:2.5MHz)
PHY to MAC
RXD[3:0]受信データビット0 先頭PHY がRX_CLKの立ち上がりに同期し駆動。
RXD[0] が先頭ビット
PHY to MAC
RX_DV受信データ有効PHY がRX_CLKの立ち上がりに同期し駆動
プリアンブル受信後SFD以前にHighに移行。
幾つかのプリアンブル消失の可能性あり
PHY to MAC
RX_ER受信エラーPHY がRX_CLKの立ち上がりに同期し駆動
フレーム内:受信エラー/フレーム外:リンク先が低電力モード
PHY to MAC
CRSキャリア検出受信クロックと非同期/半2重モードでのみ有効。
メディア使用中 High
PHY to MAC
COL衝突検出受信クロックと非同期/半2重モードでのみ有効。
衝突検出で High
PHY to MAC
表2 MII データインタフェース(受信)
図5 MII データインタフェースタイミング例
図3 MII データインタフェースタイミング例

管理インタフェース

管理インタフェース(MDIO:Management Data Input/Output)シリアルバスは、MACとPHYの間で管理情報を転送する MII のサブセットインタフェースで、2本の信号線で構成される(表3)。双方向データバスの MDIO とデータ同期クロック MDC だ。ライト時は MDC 立ち上がりで変化し、リード時は MDC の立ち上がりで読み込む。MDC の最高周波数は 2.5MHz になる。2.5MHz は、 MDIO の1ビット幅が 400ナノ秒以上に決まっているためだ。しかし、最近は高速化が進み MDC が 25MHz の製品も流通している。

信号名機能概要信号方向
MDIO管理データPHY ステータス読出し/設定書込みデータ双方向
MDC管理データクロックMDIO 駆動クロックMAC to PHY
表3 管理インタフェース

管理インタフェースは、32個の PHY デバイスの最大32個のレジスタにアクセスできる。このレジスタは、リンク状態、通信速度やオートネゴシエーションの起動などの機能がある。図4 は管理インタフェースの基本フォーマットで、図5 はリード動作例、図6 はライト動作例だ。

図6 管理インタフェースフォーマット
図4 管理インタフェースフォーマット
図7 MDC/MDIO リード動作例
図5 MDC/MDIO リード動作例
図8 MDC/MDIO ライト動作例
図6 MDC/MDIO ライト動作例

図7図8 は、 TEXAS INSTRUMENTS 社の DP83848 の例だ。実際の設計時は最新の半導体マニュアルを参照いただきたい。MII 以外のインタフェース追加や 1Gbps/10Gbps などの高速インタフェースの追加に伴い常に変化しているためだ。

表5 MDIO レジスタ例(出展:TEXAS INSTRUMENTS 社 DP83848 Data sheet)
図7 MDIO レジスタ例(出展:TEXAS INSTRUMENTS 社 DP83848 Data sheet)
図10 MDIO レジスタ・ビットマップ例(出展:TEXAS INSTRUMENTS 社 DP83848 Data sheet)
図8 MDIO レジスタ・ビットマップ例(出展:TEXAS INSTRUMENTS 社 DP83848 Data sheet)

イーサネットの物理層

この記事を書いた人

岩崎 有平

早稲田大学 理工学部 電子通信学科にて通信工学を専攻。
安立電気(現 アンリツ)に入社後、コンピュータ周辺機器の開発を経てネットワーク機器の開発やプロモーションに従事する。
おもにEthernetを利用したリアルタイム監視映像配信サービスの実現や、重要データの優先配信、映像ストリームの安定配信に向けた機器の開発行い、Video On Demandや金融機関のネットワークシステム安定化に注力した。
現在は、Ethernetにおけるリアルタイム機能の強化・開発と普及に向けて、Ethernet TSNの普及活動を行っている。