イーサネットの物理層(17)個別規格 100BASE-FX

100BASE-FX

100BASE-FX は、1995年に IEEE802.3u で標準化された。光ファイバーを伝送路として2本のファイ バーケーブルを使用する。信号源に1300nm波長帯を使い、マルチモードファイバーで 2km の伝送が 可能だ。光学仕様や符号処理は FDDI の仕様である ISO/IEC 9314 をほぼそのまま流用し、第2層から受け取った4ビットデータを 4B5B 変換で 5ビットに変換し、NRZI 変換後 62.6MHz の伝送速度で出力する。

100BASE-TX では、コネクタやケーブルから放射する妨害波(EMI)を抑える必要があるが、光ファイバーを使用する 100BASE-FX では電磁妨害波は発生しない。100BASE-FX では、妨害波の発生を抑制するスクランブラは削除された。また、光ファイバーは 62.5MHz の信号をそのまま伝送することができ多値情報を扱えないため、MLT3 変換は削除された。NRZI 符号は、「1」で状態が変化するためクロックを抽出できるが、「0」では状態が変化せずクロックを抽出できない。このままでは、「埋込クロック同期」の CDR(Clock Data Recovery)や「AC結合」に支障をきたが、この欠点は 4B5B 変換でカバーしている。

100BASE-FX の物理層は、構造上は PCS/PMA/PMD/AN の4階層に分かれているが、FEC 副層はまだなく、オートネゴシエーション機能もないため AN 副層も存在しない。PMA 副層で NRZI 変換を 行っているが、伝送媒体に合わせた再変換は必要なく、PMD 副層では光信号への変換のみだ(図1)。非常にシンプルな構成だ。4B5B 変換と NRZI 変換は、100BASE-TX の解説を参照いただきたい。

図1 100BASE-FX 物理層副層
図1 100BASE-FX 物理層副層

100BASE-FX は、伝送媒体に ISO09314-3 で規定された 2芯のマルチモード光ファイバーを使用する。コネクタは2連 SC コネクタ、FDDI-MIC、ST コネクタが規定されているが、IEEE802.3u では IEC60874-14 準拠の2連 SC コネクタを推奨している。

100Mbps 光ファイバー通信は、光ファイバーの種類や本数・伝送距離により様々な規格やベンダー独自方式が存在する。実運用での伝送距離は、光ファイバーのグレードや設置条件に影響を受けるため注意が必要だ。また、IEEE やISO/IEC 等で規格化されていないベンダー独自規格は、名前と機能が一致しない場合もある。これまでに規格化されたり、ベンダー独自規格として流通している「規格」は表1 を参照いただきたい。

表1 100Mbps 光ファイバー通信方式
表1 100Mbps 光ファイバー通信方式

表1 の100BASE-FX や撚対線の 100BASE-TX にも SFP が流通している。100Mbps の実運用では、 SFP を差し替えて伝送媒体(ケーブル)や伝送距離を変更しているケースが多い。

イーサネットの物理層

この記事を書いた人

岩崎 有平

早稲田大学 理工学部 電子通信学科にて通信工学を専攻。
安立電気(現 アンリツ)に入社後、コンピュータ周辺機器の開発を経てネットワーク機器の開発やプロモーションに従事する。
おもにEthernetを利用したリアルタイム監視映像配信サービスの実現や、重要データの優先配信、映像ストリームの安定配信に向けた機器の開発行い、Video On Demandや金融機関のネットワークシステム安定化に注力した。
現在は、Ethernetにおけるリアルタイム機能の強化・開発と普及に向けて、Ethernet TSNの普及活動を行っている。