Ethernet TSN(7)GPS 四方山話!?

カーナビでおなじみの位置情報を提供する衛星を「GPS」とか「GPS衛星」と一般的には呼んでいる。しかし、GPS は米国が打ち上げた衛星のことだ。米国はいち早く、軍用や航空機・船舶等の航法支援用として衛星を打ち上げ、サービスを提供した。その後、様々な国が航法支援衛星を打ち上げたが、 GPS が一般用語として普及した。各国が打ち上げた航法支援衛星の総称は、GNSS が正しい。ちなみに、GPS は「 Global Positioning System 」の略で、GNSS は「 Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム」の略称だ。つまり、GPS は GNSS の1種になる。

さらに細かく言えば、人工衛星によって地上の現在位置を決定する「衛星測位システム」をNSSと呼び、「地球すべてを測位可能衛星」をGNSS(G はGlobal)、特定地域が測位可能な衛星をRNSS(R はRegional)と呼ぶ。

GNSS は位置情報だけではなく時間情報も提供している。時間情報を得るためには、少なくとも1台の GNSS と衛星までの距離が分かれば十分だ。しかし、位置情報を得るためには複数の GNSS が必要になる。平面であれば2台、立体空間であれば3台の GNSS で位置情報が分かる。平面であれば円 の交点、立体であれば球の交点で求めることができる。実際の位置情報は3次元の立体であるため、必要な GNSS の台数は最小で3台になる。現実は、3台では誤差が大きいため4台の GNSS を見つけ出し位置を算出するのが一般的だ。

GNSS を保有している国(EU は1国とみなす)は、6か国ある。GDP(国民総生産)や軍事費の大きな国が GNSS を持っているようだ。日本とインドは自国の周辺で運用しているが、米国・中国・欧州は世界中で運用している。日本とインドは、 GNSS ではなく RNSS と呼んだほうが良いかもしれない。

国名システム名称台数国別GDP順位国別軍事費順位
米国GPS3111
ロシアGLONASS26115
欧州/イギリスGallileo28合計では1位相当合計では2位相当
インドNavIC763
中国BeiDou3522
日本QZSS438
表1 世界の GNSS

日本の衛星は、当初は「準天頂衛星」と呼び、愛称は「みちびき」で、正式名称は QZSSだ。 欧州/イギリスのGDPと軍事費は、EU加盟26か国とイギリスを加算した数値による。

日本が運用する GNSS は、2018年に運用を開始した「準天頂衛星システム」で愛称が「みちびき」だ。正式名称は「 QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)」だ。 Quasi-Zenith とは、準-天頂の意味で、日本のほぼ真上にあることを指す。

かつて、日本は主に米国の GPS を使っていたが、日本上空ではなく赤道上空等に配置されているため、アクセスできる衛星が限られる。真上ではなく角度があると、ビルの陰でアクセスできなくなったり、反射波でマルチパスが発生する。これらの問題を解決するために「準天頂衛星」を開発し運用を開始した。日本国内での運用が目的であるため、4機のみちびきが8の字航路を描き、常に3機が日本上空を飛ぶように運用されている。しかし、一般的に位置精度を高めるために4機の GNSS が必要だが1機不足している。2024年以降に3機の衛星を打ち上げ7機体制になる予定だ。当分の間は、3機の QZSS と米国の GPS を併用することになる。

内閣府で日本上空にある GNSS を表示するサービスを提供している。図1 は内閣府が提供する東京で受信できる GNSS の情報だ。各国の GNSS がかなりの数補足することができる。インドが運営する NavIC は、インド上空に固定されているため見えない。日本の QZSS は3機見つけることができる。仰角が小さい(水平に近い)とビル等の陰になり見えない。仰角45°の範囲に限定すると、GPS と QZSS を合わせて10機程度だ。

興味のある方は一度内閣府の準天頂サイトにアクセスしてはいかがかですか?アクセス先は「みち びき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト – 内閣府」。図1 は内閣府提供情報を引用した。

図33 内閣府提供の GNSS 情報
図1 内閣府提供の GNSS 情報

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この記事を書いた人

岩崎 有平

早稲田大学 理工学部 電子通信学科にて通信工学を専攻。
安立電気(現 アンリツ)に入社後、コンピュータ周辺機器の開発を経てネットワーク機器の開発やプロモーションに従事する。
おもにEthernetを利用したリアルタイム監視映像配信サービスの実現や、重要データの優先配信、映像ストリームの安定配信に向けた機器の開発行い、Video On Demandや金融機関のネットワークシステム安定化に注力した。
現在は、Ethernetにおけるリアルタイム機能の強化・開発と普及に向けて、Ethernet TSNの普及活動を行っている。