OAM
OAM(Operation / Administration / Maintenance)は、送信側 PHY と受信側 PHY がお互いの PHY リンクの健全性ステイタスを交換するために使用する。OAM は 12個の 9ビットシンボルで構成されるが、通常時は最初の 1個の 9ビットシンボルのみを交換する。
OAM フレームの全体構造は「表3 OAM フレーム構造」をご覧いただきたい。フレームデータの表記は OAM となり、フレームシンボル、ビット を表す。また、Reserved には「0」が入る。
00:PHY リンクは停止している。OAM フレーム終了後 2 ~ 4ミリ秒以内にリンクを切断し、再度リンクする
01:リンクパートナーにアイドル送信を要求( EEE 有効時のみ)
10:限界状態
フレーム構造
物理層のフレーム構造は 100BASE-T1 と同じ構造になっている。基本的に同じ変換コードを使用するため、フレームの開始と終了を検出する「区切りコード」も変わらない。
フレームの開始を示す区切りコード(SSD: Start of Stream Delimiter )は、PAM3 信号の [0 0][0 0][0 0] と 3B2T コードの未定義コードを3回繰り返す。この開始区切りコードの後に Ethernet フレームのプリアンブルが続く。ただし、SSD を追加したためプリアンブルは1バイト分短縮される。この辺りも 100BASE-T1 と変わらない。
フレームの終了を示す区切りコード(ESD:End of Stream Delimiter)は2種類ある。正常フレームの場合は PAM3 信号の [0 0][0 0][+1 +1] の3つのコードを送信する。エラーフレームの場合は PAM3 信号の [0 0][0 0][-1 -1] の3つのコードを送信する。終了区切りコードの直前に Ethernet フレームの FCS フィールドがあり、終了コードの後にはフレーム間ギャップが連続送信される( 「図1 1000BASE-T1 物理層フレーム構造」 )。

上位層制約事項
TCP の最大セグメントサイズ( MSS:Maximum Segment Size)は、 TCP ヘッダ長を含まない 1セグメントで転送できるデータの最大長だ。MSS の理論最大長は 64K バイトだが、Ethernet 上の TCP では 1460 バイト以下になる( 「図2 Ethernet フレーム」参照)。

IP の最大パケットサイズ(MTU:Max Transfer Unit)は、IP ヘッダを含めた最大長だ。MSS に TCP ヘッダ長と IP ヘッダ長を加えた長さが MTU 以下であれば、IP 層でパケットを分割せずに送信することができる。例えば、 MTU=1500 バイトで、 MSS=1460 バイトであれば、IP と TCP ヘッダ各 20 バイトを加算すると、1500 バイトになり分断せずに送信することができる。
一般的には、MTU から 40 バイト引いた値に MSS を設定することが多い。しかし、リードソロモン訂正符号を追加すると状況が変わる。リードソロモン訂正符号は、450 バイト単位で訂正符号を作るため、Ethernet ペイロードの中には最大 3 個のリードソロモン符号を作ることができる。Ethernet のペイロード長としては 1350 バイトになる。これを超えるとリードソロモン符号を作ることができない。
つまり、一般的には Ethernet ペイロードは 1500 バイトとして MTU/MSS を設定するが、リードソロモン訂正符号を追加する場合は、Ethernet ペイロードを 1350 バイトとして設定する必要がある。
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